読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

今月読んだ本-2010.09

早坂隆 《ルーマニア・マンホール生活者たちの記録》 (2008年,中公文庫)

2001〜02年にルーマニアに滞在するなか,マンホールの中で生活する青少年たちに出会い,交流した記録。
私は本書を「滞在記」として読む以上に,彼らという存在を生み出した社会の背景に,より関心が向いた。チャウシェスク政権のスターリン主義的圧制の打倒,その後に押し寄せた資本主義的,新自由主義的な「自由」。彼らを生み出したのはチャウシェスクの無謀な多産化政策だが,その後の「自由」にも翻弄されつづけていると言える。
一般市民の彼らに対する差別,嫌悪,排除の感情の強烈さ。彼らに対して支援の手を差し伸べるべき立場の人々もその感情を共有してしまっていることに,愕然とする思いだった。そのような彼らと気持ちを通わせようと試みた早坂さんの姿勢に,ただただ「すごい」と感じる。(あぁ,私はどうしてもこんな感想の書き方になっちゃうなぁ。固い。。。)

中西新太郎(編)×雨宮処凛中島岳志湯浅誠栗田隆子杉田俊介 《1995年 未了の問題圏》 (2008年,大月書店)

1995年は言うまでもなく,阪神・淡路大震災が起こった年であり,オウム真理教による地下鉄サリン事件が起こった年。そして敗戦から50年であった。本書は湯浅誠さんを除いてはこの年の前後に20歳を迎え,現在,反貧困運動や評論などに関わっている人々と,中西さんとの対論で構成されている。
対論が面白くて,最近の私には珍しく一晩で読んでしまった本だが,中西さんが「現代史にさえなっていない十数年間を歴史として語ることは困難を通り越して無謀でさえある」と,あとがきで書いているように,近過去を語ること・社会の流れを把握することの難しさを感じる。しかし今の社会の「生きづらさ」の背景を知り,考えるうえで一読の価値があると思う。

呉智英犬儒派だもの》 (2006年,双葉文庫

《封建主義者かく語りき》が読みたくて書店に行ったがなく,この本を買った。
正直,呉さんの本を読むといつも困惑させられるが,「あぁそうか,言われてみればそうだ」と思うところもある。そして爆笑する。冒頭に「犬儒派」を説明した文があるが,彼のスタンスをぴたりと言い表しているネーミングだと思う。自ら「封建主義者」と名乗っているほどなので「反動派」には違いないが,いわゆる右派に対しても冷笑的なのが面白い。