今月読んだ本-2008.12〜2009.01

城山三郎 《役員室午後三時》 (1975年,新潮文庫

帝王学的な経営思想と現代的な組織論のせめぎ合い…と書いてしまうと身も蓋もないが,登場人物たちが生き生きと描かれていて面白い。
主人公である藤堂の,会社経営への全人格的な思い入れも分らなくはないが,一方で,時代の要求に適応できない組織は衰退する。藤堂の思い入れそのものが,経営を迷走させていく様,迷走に対してその軌道修正を図ろうとする矢吹の動き方…どちらも興味深かった。


いわゆる経済小説を初めて読んだ。10代の頃には関心なく,20代の頃は「オヤジの読み物」だと思って軽蔑。30代は総じて働くことじたいに不安を抱え,生活の実感とは程遠いものに思えて,読む気になれなかったのだった。
読んでみると予想以上に面白かった。城山さんの作品はぼちぼち読んでいきたい。

野中柊ヨモギ・アイス》 (2007年,集英社文庫)

野中さんの原点ともいうべき《ヨモギ・アイス》と《アンダーソン家のヨメ》が収録。
両方の作品ともに,さまざまな「違い」の問題(人種,性別,文化 etc.)が折り込まれていて興味深い。
私が読みごたえを感じたのは《アンダーソン家のヨメ》で,結婚をめぐる「じたばたしたもの」がよく表現されていると思った。私は男なので,「あぁ,女の人ってそういうところで(相手や相手の家族に)違和感を感じるのかもしれない」と感じ入ったところが多かった。
米国は「個人主義の国」だと言われるが,本作で描かれる保守的米国人の「家族主義」は,わが日本のそれと大して違わないのかな。キュークツなものである点は共通。主人公の感じるじれったさ,苛立たしさ,困惑…,それらの描写が読ませる。

疋田智 《自転車の安全鉄則》 (2008年,朝日新書

軽いハウツー本かなと思っていたら,さにあらず。
私も自転車乗りの一人として,筆者の提言に共感するところが多い。