追悼・ばってん荒川さん

10月22日、ばってん荒川さんが亡くなられた。


私は熊本市の生まれ育ちだが、熊本の人で荒川さんの名を知らない人はまずいないのではないかと思うほど、長きに渡って人気があり、親しまれた芸人さんだった。
私も、小さい時から、TV やラジオで荒川さんが扮する〈お米ばあちゃん〉や、荒川さんの歌*1に親しんできた。朝は必ず、《およねの農事メモ》*2を視てから学校へ急ぎ、《とび出せ160》*3を毎週面白がって聴いていた。
1994年秋から1年半ほど、転勤で熊本に戻っていた頃は、彼のラジオ番組を毎週欠かさず聴いていた。


私がこの文章を書こうと思ったのは、私自身が荒川さんの芸に助けられた経験があるからだ。


1996年、私は年頭から、ある困難に直面してしまった。ぎりぎり死ぬことまでは考えなかったが、しばらくは仕事も手につかない状態だった。その時、せめて気持ちをまぎらすつもりで、1月14日に熊本市民会館で行なわれた、荒川さんの《芸能生活40周年記念リサイタル》に出かけたのだった。


そこで目にした、荒川さんの芸。それがとにかく素晴らしかった。
TV やラジオで日頃親しんでいるはずの歌であり、トーク*4であり、肥後にわかであるはずなのだが、迫力がまるで違ったし、熱さ、温かさというべきだろうか。荒川さんの芸のパワーに私自身が包まれたように感じたのだ。本当に腹の底から笑ったし、楽しんだ。会場を後にするときには、大きな励ましをもらったような、助けられたような気持ちだった。


私の困難は、その後決着がつくのに3年間を要した。
もちろん親や周りの人々に支えられたことが一番大きかったが、困難の初期において、あの時の荒川さんの芸が、私を励まし、助けてくれたと私は思っている。
もう一度、荒川さんの芸を、間近で観たかった!それも叶わなくなってしまったいま、せめて荒川さんの歌を聴き直したい。ご冥福をお祈り致します。

*1:《火の国一代》や《俺の人生悔いはない》など。

*2:1970年代後半頃、熊本放送 (RKK) テレビで、《おはよう700》と《8時の空》の間に放映されていた番組。

*3:1970年代後半頃、RKK ラジオで放送されていた週一の夜の番組。

*4:確か、市原悦子さんがご一緒に出演されていたような。。。