ナガリ書店の閉店に思う

昨日、文具店をはしごしたついでに魚町銀天街を歩いていた。
銀天街のなかにあるナガリ書店に行くと、シャッターが閉まっていて、そこには〈閉店〉を告げる貼り紙が貼られていた。先月に2度立ち寄った際には、いつもと変わらない様子だったので、未だ私は閉店を信じられずにいる。
北九州に暮らして通算17年余りになるが、1990年代の半ば頃まで、金榮堂*1とナガリ書店とは、双壁で小倉の顔とでもいうべき存在感を放っていた。金榮堂が人文系、社会科学系に強い本屋だとすれば、ナガリ書店は文芸書や雑誌、理工書などに強かったような印象があった。いずれも一家言もった老舗の書店で、ライバルではあったのだろうけど、それぞれのカラーの違いによる住み分けというか、補いあいみたいなものも感じていて、両方を行き来してれば、大抵の用が足りた*2のだった。

兆候はあった、でも

いま思いかえすと閉店ヘの兆候はかなり前からあったとみるべきだろう。
ナガリ書店はもともと3階まで売り場があった。正確な時期は思い出せないが、数年前にまず、3階の売り場が閉鎖された。学習参考書の売り場だった。その後、

1階=雑誌、文芸書、文庫、実用書、コミックetc.
2階=ビジネス・資格、理工書、語学書、学習参考書、写真集(アイドル系、ヌード系)etc.

となり、この売り場構成がかなり長い間続いていたと記憶している。そして2〜3年前に1階のみの営業となってから、営業時間も短くなった。
私は客として、ライバル金榮堂の〈終わっていく〉過程を目にしていた。不採算部門の閉鎖→目で見てはっきりわかるほどの在庫の圧縮→それに付随して人員も削減されたと推察できよう。
金榮堂はそうして息たえてしまった。「ナガリも同じ道をたどろうとしているのか?」という思いが私によぎった。
このかん、周辺には大型書店が複数出店し、商環境が一気に厳しくなった。でも、地元の老舗として残ったナガリ書店には頑張ってほしかった。私もひとりの客として、できる限りナガリで本を買い続けてきた。
大型書店にない、一種の気が休まるような〈安心感〉を提供してくれた、まさに〈町の本屋〉が小倉の中心部から消えてしまった。
お店の内情は無論知るよしがないが、厳しい商環境のなかでなんとか生き延びようとしてきた末に力尽きてしまったのだろうか。
これで小倉中心部は、博多ほどではないにしろ、チェーン展開の、規模がある書店だけが残ってしまった。
かつて「独立開業するなら喫茶店か本屋」だと言われた時代があったらしい。私の記憶でも1980年代の初めぐらいまでは、小さな本屋さんが新規に開店する光景をよく目にしていたし、1990年代の初めまでは郊外型の書店に勢いがあった。しかしいまでは郊外型の書店すら、新規開店の光景を目にしない。個人経営の小さな本屋さんに到っては厳しそうな雰囲気が店先から漂わんばかりだ。
本屋といえば、いわゆるメガ書店やそのミニチュア版なお店のことを指すかのような時代に入ってしまったんだろうか。また、高くつくために私は利用しないが、ウェブ通販もかなり浸透している。
確かに最近のそんな書店の品揃え・在庫点数の多さは魅力ではある。でも、そういうお店で私は落ち着けない。〈いながらにして〉本を手にすることにもかなり抵抗を感じる。私は古いひとなんだろう。
ひとつの、地域に根づいていた老舗の書店がなくなってしまった。そのことを私はまるで古い友人を失ってしまったかのようにかなしみ、惜しんでいる。(06.04.15 確定稿)

*1:10年くらい前に閉店。当時の魚町電停前とJR小倉駅前に店があった。

*2:これに同じく魚町銀天街にあった福家書店―ここはコミックに強い―まで足を運べば完璧だった。